短編官能小説『痴漢プレイ』
芹沢雄二のクラスメイトで、パッとしない女子生徒がいる。
その少女の名は、宮内瑞希十六歳。
雄二と瑞希は同じ電車に乗り、高校に通っている。但し、それほど話すわけではない。ただ、クラスが同じだけで、特に会話はしないのである。しかし、ある日、雄二は瑞希に呼ばれ、放課後の屋上に赴いていた。
雄二の通う私立K学院は屋上に立ち入りができるのであるが、殺風景な場所であり、あまり利用する人間はいない。それ故に、放課後の屋上はひっそりとしていた。第一、何故瑞希に呼ばれたのは不明である。今まで特に話したりしなかったのだから、その分奇妙に感じられた。
雄二が屋上に向かうと、既に瑞希の姿があった。ここで、宮内瑞希について少し説明しておこう。瑞希の身長は一六〇センチくらいで、それほど高くない。さらに痩せ型であり、肩まで伸びた髪の毛が、若干茶色に染まっている少女である。ルックスもそれほど悪くはないのだが、全体的に地味な印象があり、言うほど人気があるわけではない。
つまり、完全にパッとしない普通な少女である。女子高生と言うと、スカートが短い傾向があるが、瑞希のスカートはそれほど短くなく、校則に順守している。真面目な少女なのだろう。そんな風に雄二は考えていた。
ひっそりと静まり返った屋上で、雄二は瑞希に向かって尋ねた。
「あのさ。用って何?」
もしかすると、告白されるかもしれない。
屋上で告白する人間がいることを、雄二は知っていた。それだけに、心は半分浮ついている。
「うん。実はね」
答えにくそうに、瑞希は囁いた。
僅かに沈黙が流れるが、すぐに瑞希が声を出した。
「あのさ、芹沢君って痴漢とかしたことある?」
「は?」
あまりの質問に、雄二は面を食らう。
痴漢? 一体何を言っているのだろう……。
「だから、痴漢。電車の中で女の人に性的な悪戯する行為」
「それは知ってるよ。それに、俺は痴漢なんてしたことないよ」
「そう。してみたいとは思うの?」
「思わないよ。だって犯罪だろ」
「本当に?」
「本当だよ。一体なんだよ。いきなり呼びつけたと思ったら、痴漢の話なんて、ちょっと普通じゃないぜ」
「うん。実はね。あたし、痴漢されたことないの。多分、パッとしないから……」
「そうなの。いいじゃないか。痴漢されるなんて気持ちのいい行為じゃないだろう」
「でも周りのクラスメイトには、結構多いのよ、登下校中の電車内で痴漢されるって」
「へぇ……。そうなんだ。女子は色々大変なんだな」
「うん、それでね、あたしも痴漢されてみたいの」
「へ? お、おま、何を言ってるんだ」
と、慌てて答える雄二。
対する瑞希も顔を真っ赤にさせている。真っ赤になりたいのは、こっちの方だと、雄二は突っ込みたくなる。
「だから、痴漢されてみたいの。それでね、その痴漢役を芹沢君にしてもらいたくて」
「な、なんで俺なんだよ」
「気づいていると思うけれど、あたしと同じ電車を使って、同じ駅で降りるのって芹沢君だけなのよ。あんまり知らない人に痴漢されるのって抵抗あるし、それなら優しそうで、同じ駅を利用している芹沢君がいいかなって」
優しい人。
そう言われると、悪い気はしない。信頼されている証拠だろう。
しかし、お願いが常軌を逸している。どこの世界に、痴漢をしてくれとクラスメイトに頼む人間がいるのだろうか?
「あのさ、一つ聞くけど、どうして痴漢されたいんだ?」
と、雄二が尋ねると、瑞希はすんなりと答えた。
「なんていうのかな。経験してみたいの。どんな感じなのかなって。それにパッとしない印象が変わると思うし……」
「痴漢ってその、Hなことするんだぞ。それでもいいのか?」
「芹沢君ならいいよ。だからお願い」
あまりに、必死に懇願されるので、雄二も断れなくなった。
こうして、彼は痴漢役を引き受けたのである。
*
下校中の車内――。
時刻は午後五時。朝方のラッシュ時に比べると、車内はそこまで混雑していない。
しかし、座れるほど、余裕があるわけではない。
瑞希と雄二は同じ車両に乗り、目立ちにくい、車両の連結部分まで足を進めると、そこで二人縦に並んだ。つまり、瑞希が前に、そのぴったり後ろに雄二が立ったのである。
「じゃあ、やるぞ、いいんだな?」
「うん、お、お願い」
再確認し、瑞希の同意を得た後、雄二はスッと手を伸ばした。
そして、瑞希のスカートの中に手を入れる。
白い、下着の生地が雄二の手に触れる。それに妙に温かい。
雄二は普通の高校生であり、当然痴漢の経験はない。だからこそ、どうすれば、瑞希が望む痴漢行為ができるのか、皆目見当がつかなかった。
それでも引き受けた以上、見様見真似でやるしかない。
お尻部分を撫でまわしながら、雄二は瑞希の様子を見る。
瑞希は前を向きながら、顔を赤くさせている。そして、時折、「あん」と小さな声を上げる。
(そ、そんな声を出すなよな)
あまりに、甘い声であるので、雄二も興奮してくる。
健全な高校生である雄二のペニスは、勃起し始め、先端から我慢汁が溢れ始めた。
雄二は下着の隙間から指を入れて、生のお尻に触る。見たわけではないのだが、温かく、すべすべとしている。だんだんと興奮してくる雄二。
彼の興奮のボルテージも上がってくる。
そんな中、瑞希が囁くように言った。
「もっと、大胆にしてみてよ」
「大胆に?」
「うん。お尻じゃ物足りないの」
「本気か?」
「大マジよ。だからそっちも本気で痴漢して」
本気の痴漢。
それがどんな行為なのか不明だが、雄二は、お尻を触るのを止め、今度は、手を前方の方に回した。女性の三角地帯。そこに雄二の手が伸びる。
そして、下着越しに三角地帯を優しく撫でまわす。
「ふ、ふぁ」
徐に瑞希の声が漏れる。
それ聞いた雄二は慌てて、
「お、おい、あんまり声出すなよ。疑われるだろ」
「ご、ごめんなさい、ただびっくりしちゃって」
「続きしてもいいのか?」
「うん」
「じゃあもっと大胆に行くぞ」
そう言い、雄二は、下着の中に手を突っ込んでいく。
すると、瑞希の陰毛に指が触れた。
指先で触れただけであるが、妙に興奮してくる。この下には、女性の大切な部分が隠されている。
雄二は童貞である。そのため、女性器を見た経験はないし、どう触っていいのかわからない。しかし、陰核を触れると気持ちよくなるというのは、Hな本を読み知っていた。
(クリトリスを触ればいいのか?)
常に手探りである雄二は、陰部に指を伸ばし、そこをじっくりと撫でまわした。
「う、うぅ、あん……」
僅かに瑞希の声が漏れる。
その声を聞いていると、雄二もおかしくなっていく。
何かこう、もっと触ってみたくなるのである。
(確か上の方にあるんだよな、クリトリスって)
具体的な位置がわからない雄二は、いたずらに小陰唇を撫でまわし苦戦をしていた。
指で触れ続けていると、微かに指先が濡れ始めた。しっとりした愛液が雄二の指先に付着し、それが一層彼の興奮を高めていく。
(ぬ、濡れてる……。こ、興奮しているのか)
「芹沢君、も、もっと触って、奥の方を」
そう言われ、さらに大胆に指を動かす雄二。
彼は小陰唇から膣口に指を回し、さらに膣内に指を押し入れ、ゆっくりとかき回していく。
彼女の秘部からは愛液が流れ始めており、それで指はスムーズに動く。
ぬめぬめとした触感。人指し指で膣壁を押すように刺激し、さらに親指で陰核を刺激する。
実際に見ていないので、詳しくはわからないが、豆のような突起部分に親指が当たった。その瞬間、瑞希の体がビクンと震えた。
「く、くぁ、ふぁ……」
「き、気持ちいいのか?」
囁くように告げる雄二。すると、瑞希は前を向いたまま、
「う、うん。芹沢君って上手なのね」
「そんなことないよ。完全に見様見真似さ」
「と、とにかく続けて」
「わかった」
そのまま陰核を刺激しながら、膣内をピストンするように指で動かしていく。
一層、愛液は流れ出し、それがぴちゃぴちゃと音を立て始めた。
今のところ乗客は気づいていないが、何かこう、本格的に痴漢をしているような気分になる。
「なんか変。どうしよう」
「え?」
「もっと触って」
雄二は、膣内から指を抜き、親指と人差し指で、陰核を摘まむように刺激していく。
すると、瑞希の体に電流が走る。
「い、イキそう」
瑞希はそう言うと、恍惚とした表情のまま、膣内を激しく収縮させた。
痙攣に近い衝撃が走り、瑞希はガクッと膝を折った。
一斉に車内の人間の視線が突き刺さる。
咄嗟に指を下着から離し、瑞希を支えるように手を差し伸べる雄二。
「だ、大丈夫か? 宮内?」
「う、うん、ごめんなさい。ただ気持ちよくなりすぎちゃって、足が砕けたっていうか」
「と、とにかく今日はこれで止めよう。怪しまれてるし」
「そうだね……」
*
二人は同じ駅で降り、改札口で佇んだ。
「芹沢君、今日はありがとう、なんか痴漢される気持ちがわかった」
「ならよかったよ。役に立てたみたいで」
「そ、そのまた今度してくれない。なんか気持ちよかったし、もちろんお礼もするから」
「い、いいのかよ」
「う、うん、何事も経験だし」
「なら、付き合ってやるよ。それで満足なんだろ」
「ありがと。じゃあまた明日ね」
「なぁ、お前はパッとしなくなんてないよ。ちょっと、可愛いと思うし。自分に自信持てよ」
そう言うと、瑞希は顔を赤くしながら、
「褒めてくれるんだね。嬉しいよ。芹沢君には感謝しているから。これからも宜しくね」
こうして二人は別れた。
それ以降、二人は時折、車内で痴漢プレイを楽しむ仲になったそうである。いずれにしても、それはまた別の話――。
〈了〉
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