短編官能小説『聖夜』
聖夜。
クリスマスである。
海藤哲也は、仕事を終えて、都会の喧騒の中、ある人物と待ち合わせをしていた。
待ち合わせしている人物は、哲也の彼女である田中美沙。今年二十歳になるOLである。美沙は高校を卒業した後、哲也の働いている会社の事務として入社した。
二人が出会ったのは、今から半年前。会社の飲み会で話し、意気投合し、そのご交流を持つようになったのである。特に哲也は今年二十三歳になる新米の社会人なのであるが、今まで彼女ができた経験はなく、美沙が初めての彼女であった。
だからこそ……。
(クリスマスは幸せに過ごしたい)
そんな風に感じていた。
本来なら、クリスマスイブからクリスマスにかけて一緒に過ごしたかったのであるが、イブは仕事が忙しく、休みをもらえなかったため、こうしてクリスマスの夜は時間を空け、なんとか一緒に過ごせるようになったのである。
時刻は午後七時。
待ち合わせの時間である。哲也がそわそわと、駅前のスペースで待っていると、不意に声が聞こえた。
「哲也さん。早いですね」
そう声をかけたのは、美沙であった。
聞き覚えのある声が、哲也を安堵させる。
哲也は美沙をまじまじと見つめる。白のダウンコートに。シックなブラウンのボトムス。小さな鞄を持ち、キラキラと光る髪の毛が美しかった。あまりに可愛いものだから、哲也は見惚れてしまう。
その様子に美沙も気づいたようだった。
「あ、あの何かついてます?」
美沙は凝視されたため、不審に思ったようである。
「い、いや、ゴメン。ただ、キレイだなって思って」
「お世辞言っても何もできませんよ」
「お世辞じゃないよ。本当なんだ」
「まぁいいです。それで今日はどこに行くんですか?」
「夜景に見えるホテルで食事をして、そのまま泊まるんだ。結構いい部屋が取れたから期待していてよ」
この日のために、約三カ月前からホテルを予約し準備を進めてきたのである。
「それじゃ期待しちゃおうかなぁ。夜景の見えるホテルで食事なんて、なんかおしゃれですね」
「おしゃれな場所は嫌い?」
「いえ、嫌いじゃないです。ただ、あんまりそういう場所に行かないから、緊張するだけです」
「僕だって、普段は行かないよ。ただ、今日はクリスマスだからね、特別だよ」
「そうですね。今日は聖夜ですもんね」
「とりあえず行こうか。きっと楽しめると思うよ」
ホテルに向かい、食事をする二人。
普段はまず食べないフランス料理のコースを予約してある。
前菜から始まり、スープや肉料理などが出て、さらにデザートもある。食事中にはワインを楽しみ、食事の時間は淡々と過ぎていく。
ホテルのレストランは、最上階にあり、一面の窓ガラスの先には、うっとりするほどキレイな夜景が見えている。
「キレイですね。夜景」
不意に美沙が言った。
「確かに……。こんな幻想的な場所があるんだねぇ。凄いよ本当に」
「食事も美味しいし。ワインもいい感じですね」
「普段、こんないいワインは飲めないよ。クリスマスの特別仕様だ」
「私の場合、普段そんなにお酒は飲みませんから、余計に感動的でした。ありがとうございます」
食事を終えると、そのままホテルの一室に場所を移す。
かなり人気のあるホテルであり、予約を取るのが大変だったが、それでも哲也はこの日のために苦労して予約を取ったのである。
部屋はスイートルームと思ってしまうほど、キレイな空間であった。
広々とした空間の中に、ダブルサイズのベッドが置かれておいる。明かりなどの調度品も素敵なものが多く、全体的におしゃれな空間が広がっている。
部屋の窓の外には、一面の夜景が広がっている。クリスマスのイルミネーションがかなりキレイであり、幻想的な風景が広がっている。
「スゴイ、キレイな部屋ですね」
「だね。流石は高級ホテルだよ」
このホテルは高級ホテルだけあって、ビジネスホテルとはレベルが違う。うっとりとするほどキレイであり、何より聖夜にカップルが泊まるのにはうってつけであった。
「それにしても食事美味しかったですね」
「うん、美沙がそう言ってくれると、僕も嬉しいよ」
「後はのんびりとゆっくりしましょうね」
その後は、ホテルの一室でお酒を飲みながら、語り合って過ごした。
やがて、夜も更け、ムードも高まってくる。
「哲也さん、私先にシャワー浴びてきます」
「あ、うん。わかった」
美沙がシャワーに消えて行く。
美沙がシャワーに入っている間、哲也は悶々としていた。これからセックスをするのだろうけれど、何か、如何にもやらせてほしいと言っているような感じがして、哲也は気が乗らなかった。
美沙がシャワーから出ると、入れ違いで哲也がシャワーに入る。
熱いシャワーを浴びながら、彼はこのままセックスをしてもいいのか考えていた。
しかし、答えは出ない。
ここでセックスをしなかったら、多分美沙も不思議に思うだろう。
聖夜なのだ。セックスをしないカップルは少ないだろう。ここまでお膳立てをしたのである。だけど、ただやりたいだけの男性には思われたくなかった。真摯に付き合っているからこそ、哲也は美沙を大切にしたかったのである。
シャワーから上がると、美沙がベッドの上で座り込んでいた。ホテルの備品であるバスローブを着用している。その姿はまるで天使のように愛らしかった。
「哲也さん、今日はありがとうございます。私、とっても嬉しいです」
美沙はそう言うと、ベッドから立ち上がり、哲也に抱きついた。
哲也も彼女を抱きしめて、そのままベッドの上に向かう。
そして、
「あのさ。僕は君を大切に思っている。今日は特別だけど、ただ単にセックスがしたいわけじゃないんだ。君と一緒に過ごしたい。それだけなんだ」
「わかってますよ。哲也さんは優しいからセックスに対して罪悪感があるんですよね。でもそんな風に感じる必要はありません。私は哲也さんとセックスしたい。この特別な夜に」
「み、美沙……」
「いっぱい愛してください」
そう言われ、哲也は美沙を押し倒した。
そしてバスローブをはぎ取り、彼女の白い肌に触れていく。
バスローブの下に美沙は下着を身に着けていなかった。生まれたままの姿である。
(なんてキレイなんだ)
お世辞ではなく、本当にそう思えた。
まずはキスから始める。優しく触れるだけのキスをして、その後に、舌を中に入れてディーブなキスを展開していく。
キスをしながら、おっぱいを揉み、そして秘部を指で責めると、じんわりとあそこが濡れてくる。美沙も哲也を受け入れる準備が整ったようである。
ぴちゃぴちゃとヤらしい音が鳴り響き、室内を包み込んでいく。
美沙の秘部からは大量の愛液が流れ出し、それがてかてかと光り輝いている。
(そろそろいいかな?)
もう、挿入しても問題ないだろう。
コンドームを装着し、哲也はゆっくりと膣口にペニスを合わせていく。
「行くよ」
「はい。愛してください」
ずぶずぶずぶ……。
ペニスは膣内に吸い込まれていく。
温かく、ぬめぬめとしている膣内は、それだけで気持ちがよかった。
「ふぁ、て、哲也さんが入ってくるぅ」
美沙の甘い声が漏れる。
ペースを最初から上げず、ゆっくりとした動きで哲也は動いていく。奥の方までペニスを突き刺し、しっかりと、美沙を気持ちよくさせる。自分よがりのセックスにならないように注意しながら、哲也は淡々とピストンを続ける。
「て、哲也さん、き、気持ちいいですぅ。もっと突いて下さいぃ」
「わかった。少し速めるよ」
次第にペースを上げていく哲也。
単調なセックスにならないように、正常位でも色んな体位を試していく。美沙の脚を高く持ち上げたり、左右に思い切り開いたり、後は姿勢を前傾にさせたり。
哲也は決してテクニシャンというわけではないが、美沙を気持ちよくさせたいという気持ちが全面に現れていた。その気持ちを汲み取り、美沙も腰を動かしつつ協力してセックスを進めていく。
「哲也さん、う、後ろからついてください、お願いします」
美沙は意外とバックが好きである。これまでの何度かバックでセックスをした経験があるのだ。
哲也は美沙を四つん這いにさせると、今度は後ろから激しく突き始めた。
バックの場合、正常位とは違い、奥までペニスが届く、また正常位の時には感じられなかった快楽が襲い、気持ちよくなっていくのである。
獣のようなセックスを続ける二人。
やがて、哲也も限界を迎え始める。
「美沙、そろそろイキそうだ。一緒にイコう」
「ああん。私もイキそうです。もう少し……後少しなんです」
バックで覆いかぶさるように美沙を突き続け、そのままペースを落とさず抽送をしていく。
「うわぁぁぁイキそうだ。イクよ」
「わ、私ももう駄目、イっちゃいますぅ」
「イクぅぅぅぅ!」
次の瞬間、大量の精液が迸った。
コンドームをしているから、中に出したわけでないが、コンドームには大量の精液が溜まっていった。
セックスを終えて、二人はベッドの上で抱き合っていた。
「いい思い出になりました。哲也さんありがとうございます」
「僕の方こそありがとう。それにこれからもよろしく。二人で楽しいことをたくさんしていこうよ」
「そうですね。ずっと一緒ですよ」
最後のもう一度、哲也は美沙にキスをする。
それはどこまでも甘く、甘露のような味がした――。
〈了〉
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