短編官能小説『年越しセックス』
「大晦日だね」
「大晦日だよ」
そんな当たり障りない会話をしている男女がいた。
男子の名は、紺野勇磨。
女子の名は、桐生涼花。
二人は同じ高校に通う幼馴染だ。
既に学校は冬休みなっている。だから、家でゴロゴロとしていた。
季節は冬、大晦日である。
街は色めき立っており、どこも騒がしい。外は寒いため、外に出て何かする気も起きない。だから、勇磨と涼花の二人は、勇磨の自室でダラダラと過ごしていた。
「何か面白いことないかな」
と、涼花が漫画を読みながら尋ねた。
対する勇磨は、少し考えを巡らせてから、
「面白いこと? 漫画読んでるじゃん」
「もう何回も読んだし。なんか飽きちゃったね。世間では大晦日だよ」
「まぁそうだけど、あんまり俺たちには関係ないよね。ああいうイベントって、家族とか、恋人か、そういう人たちに向けた感じがするよ」
「そうかもしれないけれど、とにかく暇なのよ。なんか楽しいことないの」
「そんな風に言われてもなぁ。ゲームでもする? ウイニングイレブンがあるけど……」
「サッカー苦手だし……、それに知ってるでしょ、私がゲーム音痴だっていうこと」
涼花はゲームが壊滅的に下手である。
その事実を勇磨は知っている。二人は、幼稚園の頃から一緒だったから、既に付き合いは10年以上である。しかし、あまりに距離が近すぎるため、お互いがお互いの感情に気づいていなかった。
「ゲームがダメなら、トランプとか?」
「はぁ~、なんで私があんたとトランプなんてしなきゃなんないのよ、却下、却下よ」
他に何も思いつかない。
勇磨が落胆していると、涼花がベッドの下に手を入れた。
そして、ある本を取り出す。
「あ、こんなところに隠してる。もっと上手い隠し場所見つけなよ」
それは勇磨の持つHな本であった。
官能小説である。
勇磨は普通のタイプのエロ本を持っていない。官能小説が好きなのである。ネットや書店で購入しては、夜な夜な読むのが好きなのだ。
「別にいいだろ、官能小説だから、見つかってもいいんだよ」
「なんでこんな本読むかなぁ……。何が楽しいの?」
「官能小説を舐めるなよ。意外と面白いんだよ。文学的にも優れているし、例えばさ、日本の文学でもエロスに塗れたものはあるわけで」
「へぇ、例えば?」
「う~んと、谷崎潤一郎とか村上春樹とかかな。村上春樹はエロ小説が書けると思う。なんていうのかな、純文学ってエロスな要素が満載なんだよ。それを色濃くしたのが、官能小説」
「でもさ、こういうのってすぐにセックスしちゃうんでしょ?」
年頃の娘の口からセックスという言葉が出て、勇磨は聊か困惑した。
「まぁ官能小説だからね。当然エロシーンはあるよ」
「ふ~ん。そうなんだ」
そう言いながら、涼花はパラパラと官能小説を読み始めた。
そして5分ほどで、
「なんか生徒が先生とセックスしちゃったんだけど、これって倫理的にアリなの?」
今、涼花が持っているのは、女教師ものの官能小説である。
女教師ものの場合、多くは男子生徒と淫らな関係になるケースが多い。
それは官能小説だから仕方ないだろう。
Hな関係にならなければ、話が進まないからだ。
「まぁそうだよ。そう言う話だからね」
「でもさ、実際にこんな風になったら、大問題じゃない」
「そりゃそうだけど……。それが官能小説さ」
再び、涼花は小説を読み続ける。しかし大分飽きてしまったようで最後の方のページを読み始めた。
「最後には幼馴染と先生とやっちゃったわ。こりゃ犯罪だわ」
「言うな。別にいいだろ、小説なんだから」
「こういう話ってさ、よく幼馴染とセックスするものなの?」
「そういう話も多いよ、特にラノベ系の官能小説は、舞台が高校とか大学だから、当然女の子で幼馴染のキャラが出てくる。そう言った場合、……そ、その、Hな関係になるケースは多いと思う」
「ふ~ん。ならさ……」
そこまで言うと、涼花は不意に言葉を区切った。
一体、何を言おうとしているのであろうか?
勇磨は不審に思いながら、涼花を見つめた。
「何か言いたいことでもあるの?」
と、とりあえずジャブをかます。
すると、涼花は顔をぷいと横に向け、
「あのさ、その、私たちも幼馴染じゃない。なら、勇磨もそう言う関係になりたいと思うの?」
「そう言う関係? 何言ってんの?」
「私に言わせたいわけ? それとも天然なのかしら」
「言いたいことはわかるよ、つまり、俺たちも官能小説のようにセックスできるのかって意味でしょ。答えはNOだよ。俺は何ていうのかな、涼花を女として見れない」
と、勇磨が言うと、途端涼花はむっとした顔になった。
「女として見れない……ですって」
「うん。だってずっと一緒だったから」
「ふ、ふ~ん、そ、そうなんだ。なら、私が抱いてって言っても抱いてくれないんだ」
「ま、まぁ、そうなるかな」
「酷いよ、それ」
「ど、どうしてさ。当然だろ。き、兄弟みたいなものさ、僕たちはね」
これは嘘だった。勇磨はどこかで涼花を女として理解している。
だが、それを言えなかった。言えば関係が崩れてしまうと思ったからだ。
「なら、試してあげる」
そう言ってからの涼花の行動は早かった。
途端に服を脱ぎ、下着姿になったのである。
当然、勇磨は慌てる。
「ちょ。ちょっとおま、何してるんだよ」
「幼馴染が相手なら興奮しないんでしょ。本当かどうか試してあげる」
そのように言うと、下着姿のまま、勇磨のズボンに手をかけた。
そして、一気にズボンを脱がしていく。
「な、何を……」
ボクサーパンツ姿になった勇磨。彼のペニスは少しだけ固くなっていた。
「興奮してるじゃないの?」
「当然の反応だ」
「幼馴染を見ても興奮しないんじゃないの?」
「そ、それは」
「ねぇ、セックスしてみようよ。今日は大晦日なんだし」
大晦日だからセックスする理由がわからなかった。
しかし、こんな下着姿を見せられて、勇磨も引くに引けなくなった。
「いいのかよ。お前処女だろ?」
「あんただって童貞でしょ?」
「初めては好きな人がいいじゃないのか?」
「私、勇磨のこと好きだし」
「え?」
「だから好きって言ってるの。気づかなかったの?」
それは意外な告白だった。近すぎるから、お互いの気持ちが理解できなかったのである。
「す、涼花……」
「とにかくセックスしましょ。ち×ぽをここに挿れるんでしょ」
そう言い、涼花は下着の上から秘部を指さした。
ごくりと喉を鳴らす勇磨。既に興奮はマックスに達している。
「い、良いんだな。セックスしても」
「うん、しようよ」
「わかった」
勇磨は覚悟を決めて、全裸になった。既にペニスは勃起し、臨戦態勢になっている。大きくなったペニスを見て、涼花は驚きの声をあげる。
「お、大きんだね」
「誉め言葉として聞いておくよ。じゃあ挿れるぞ」
「ちょっとまって、いきなりはちょっと」
「大丈夫だよ」
そう言い、勇磨は涼花の下着を軽く触れた、クロッチ部分に染みができている。つまり、濡れているのである。
「濡れてるみたいだし」
「そんな風に言わないで」
「とにかくセックスしたいんだろ、なら、やっていないと」
「そ、それもそうね、じゃあお願い」
勇磨は涼花の下着を下ろし、ブラも外した。控えめな陰毛と恥丘が見える。勇磨は初めて女性器を見る。それ故に興奮していた。
涼花の足を広げ、秘部を押し広げると、そこにベニスを合わせてゆっくりと挿入していく。
すると、涼花の顔が苦痛に変わる。
「く、くぁ痛い」
「大丈夫か、抜こうか?」
「ううん、大丈夫、でもゆっくり動いてほしいかな」
「わかった」
なるべくゆっくりと抽送する勇磨、それでもマスターベーションにはない気持ちよさがペニスを襲う。
……。
どのくらいだろう、ゆっくりとした動きでピストンと続けていると、涼花の表情も幾分か穏やかになる。痛みが徐々に消失し、やがて快楽の波がやってきたのである。
「な、なんか気持ちいいかも。もっと速く動いてもいいよ」
「よし、速く動くぞ」
ピストンの動きを速めていく勇磨。
しかし、あまりに速度を速めてしまったため、あっという間に、興奮はピークを迎える。
「あ、あのさ、悪いんだけど、もうイキそうなんだけど……」
「はぁ。もうイキそうなの? 我慢できないの?」
「ゴメン、無理っぽい……」
「なら、イっていいけど」
「とりあえず外に出すよ」
オルガスムスを感じた勇磨は、ペニスを引き抜き、そのまま涼花のお腹の上に射精した。
ドクドクと白濁した液体が流れ、涼花の腹部を覆っていく。
「す、すごい熱いよ、これが勇磨の精液なんだね」
「ゴメン、本当はもっと長く続けたかったんだけど」
「ううん。最初だから仕方ないよ。それに、私も少し痛かったし、丁度いいよ。でもさ、今日はもうちょっと愛してほしいな。大晦日なんだし。年越しセックスしない?」
「年越しセックスか、それもいいかもね。でもいいんだな?」
「うん、私勇磨が好きだし……勇磨は私が嫌い?」
「いや、嫌いじゃないよ。好きだと思う。ただ、混乱しているだけで……、俺も涼花が好きだ」
「なら愛し合おう。今日はずっと私だけを見ていて……」
「うん」
勇磨は、涼花の唇に向かってキスをした。
キスよりも先にセックスをしてしまい、順番がごちゃごちゃになったが、二人の大晦日は思い出に残る夜となった――。
〈了〉
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