短編官能小説『元日の夜の奇跡』
2019年もスタート。
1月1日、元日である。
西島秀隆は、一人初詣に赴いていた。
彼は今年二十八歳になる青年である。
まだ独身であり、現在も彼女はいない。
孤独な暮らしを送っている。
そんな中、神社まで行き、お参りをする。この時期はどの神社も混雑している。なぜ、こんなに人が多いのか? 堪らなく嫌になる。これだけの人がいるというのに、自分は孤独なのである。孤独が嫌なわけではないが、人のぬくもりを感じたい日だってあるのだ。
混雑する列に並び、ようやくお参りができた。
基本的に、初詣の願いは一つにするといいらしい。あまりに願いをたくさんしてしまうと、神様も混乱するだろう。
秀隆の願いは、彼女が欲しいということだった。
生まれてこの方、彼女というものができた経験がない。
だから、一度くらいは自分の彼女が欲しいのであった。しかし、それは難しい。出会いのないような仕事をしているし、合コンなどにもいかない。また、友達も少ない秀隆は、そのようなイベントとは無縁の生活を送っている。
(彼女ができますように……)
何か、高校生のような気分になってくる。
もうすぐ三十歳にもなるというの、願いが彼女が欲しいというのは、少し滑稽である。しかし、それくらいしか願い事は思い浮かばなかった。
(まぁどうせ無理だろうけれど)
半ば、彼は諦めていた。
新年の初詣で願いをする人間は多い。
しかし、それで願いが叶う人間なんてほとんどいないだろう。願いは、願いだから光り輝くのだ。そんな簡単には願いは叶わない。それはわかっている。
賽銭箱には500円入れた。秀隆にとっては奮発した金額である。少しでも願いが叶う可能性が上がるのなら、500円くらいどうってことはない。
お参りを終え、おみくじを引く。
吉だった。恋愛運はそれほど悪くはない。しかしおみくじの結果など当たったことがない。だから、秀隆はまるで信じてはいなかった。
神社の周りには屋台が立ち並び、人で賑わっている。何か買ってもいいのだが、特に腹が減っているわけではなかったので、そのまま素通りして、家路に就こうとした。
神社を出て、真っすぐに歩いていると、前方から一人の老人が歩いて来るのがわかった。酷く薄汚い老人だ。ホームレスかもしれない。
その老人は秀隆の前で倒れた。
「え?」
慌てる秀隆。彼は老人に駆け寄る」
「大丈夫ですか?」
老人は口をパクパクとさせながら、苦しそうに顔を歪めている。
「青年、何か食べ物はないかね?」
「食べ物? 今はないですけど……、神社に屋台がありますよ」
「何か食べさせてくれんかね」
困った。ホームレスに奢らなければならないかもしれない。
しかし、このまま見捨てては置けない。秀隆は屋台で焼きそばを購入すると、それを老人に渡した。老人はそれをうまそうに食べ、最後に告げた。
「なかなか見ごたえのある青年だ。よろしい、願いを叶えてやろう」
「何言ってるんですか?」
「いいから願いを言ってごらんなさい。私が叶えてやるから」
なんだか変な老人に絡まれてしまった。
願いを叶えるなんて神様でもない限り不可能だろう。
それを、こんなホームレスのような人間が言うから対応に困ってしまう。
しかし、願いはあるのだ。彼女が欲しいという願いが……。
「願いはあります。でも無理ですよ」
「どんな願いなのかね?」
「そ、その、彼女が欲しいんですよ。今まで付き合ったこととかないから」
「なるほど、よろしい。その願い、私が聞き届けよう」
そう言うと、老人は立ち上がり、よろよろと神社の方へ消えて行く。
立って大丈夫なのだろうか? 気になった秀隆が後を追うと、不思議なことに老人はいなくなっていた。文字通り、煙のように消えてしまったのである。
(な、何だったんだろう。あの人は……)
消えてしまったものを追うことはできない。今度こそ、彼は家路に就いた。
自宅に着いてゴロゴロしていると、不意に来客を告げるベルが鳴った。
誰だろうか? 時刻は午後7時。一人暮らしである秀隆のもとのやってくる人間はほとんどいない。宅急便だろうか?
「はい、どちら様ですか?」
そういいながら、玄関のトビラを開ける。
すると、全く知らない女性が立っているではないか?
それもかなりの美人である。女優といっても通用するかもしれない。
白のダウンコートに、ひざ丈のスカート、さらに黒タイツを穿いている。足元は、ムートンブーツで大分可愛い印象がある。髪ややや長めのようだが、ニット帽をかぶっているため、正確な長さはわからなかった。
「あ、あのどちら様ですか?」
「小松憂妃です。実は、あなたの願いを叶えにやってきました」
「は?」
あまりの展開に言葉を失う秀隆。
願いを叶えにやってきたというのはどういうことなんだろうか?
「あなたは何を?」
「とにかく入れてもらえますか。寒いですし」
「はぁ。まぁいいですけど」
流れるままに、憂妃を部屋に入れる秀隆。
秀隆の部屋は普通のワンルームである。そのため、それほど広くない。
簡素なベッドと、机、棚とクローゼットがあるだけのシンプルな部屋で、全体的に物が少ない。
「きれいな部屋ですね」
「そうですかね。それで何の用ですか」
「ですから願いを叶えに来たんです」
「願いって何を」
「あなたは恋人が欲しいんでしょう。だから私が恋人になります」
そう言うと、憂妃は何を思ったのか、ダウンコートを脱ぎ、黒のタートルネックのニット姿になると、それも脱いで、あっという間に下着姿になった。
「ちょっと何を脱いでいるんですか?」
慌てふためく秀隆。しかし、憂妃は全く躊躇しない。
「恋人同士がすることをしましょう」
「何を?」
「まずはキスからですよ」
下着姿のまま、憂妃は秀隆の唇を奪う。プルンとした艶のある唇は、どこまでも柔らかかった。
そしてキスをしながら、秀隆の服を脱がし始める憂妃。
訳もわからず、服を脱がされる秀隆は、とうとうボクサーパンツ一枚になってしまった。
「準備はいいですね」
と、憂妃は言う。
彼女の肉体は非常に美しい。
恐らく、また二十代の前半くらいだろう。肌は白く透き通るようで、くびれたウエストや豊満なバスト、ふっくらとして臀部が魅力的であり、女性らしいシルエットをしている。
こんな姿を見ていると、嫌でも興奮してくるではないか。
「セックスしましょうか。私たちは恋人同士ですから」
「で、でも」
「いいからやりましょう。それが私の役目でもあり、あなたの願いなんです」
憂妃はとうとう下着まで脱ぎ始めた。ブラを外し、ショーツを脱ぐと、生まれたままの姿になる。
憂妃の全裸の姿を見て、秀隆も興奮してくる。彼のペニスは硬く勃起し、はち切れんばかりに膨らみ始めた。
憂妃はそのまま秀隆をベッドの上に横にさせると、ボクサーパンツを脱がし、勃起したペニスを、またぐようにして、自分の秘部に押し当てた。
騎乗位で、秀隆のペニスが膣内に吸い込まれていく
秀隆は彼女ができたことはないが、童貞ではない。過去に一度風俗で初体験を済ませているのである。
「うぁ……、お、大きいですね」
ペニスを奥深くまで挿れると、憂妃はそんな風に呟いた。
そして、そのまま腰を振り始める。ペニスが擦れて、秀隆も気持ちよくなっていく。
「あなたも下から突いてください」
秀隆は言われるままに、憂妃の腰の動きに合わせて、下から突き上げるようにペニスを動かす。一体、何をやっているのかわからなくなるが、それでも気持ちいいことには違いない。圧倒的な快楽が、彼の身体を包み込んでいった。
「あん、いい感じです、もっと、激しくしてもいいですか?」
「ぼ、僕も気持ちいい……、もっと激しくしてもいいよ」
憂妃は姿勢を前傾にさせて秀隆に覆いかぶさるような体勢を取った。
そのまま憂妃の豊満なバストが、秀隆の胸の部分で潰れ、柔らかく弾けていく。思わず、秀隆は憂妃を抱きしめてしまう。この女性からは、母性が溢れるというか、人を包み込むようなオーラがあるのだ。もっと繋がっていたい。そんな気持ちが湧き出してくる。
「あん、ふぁ、いい、気持ちいいですぅ。ち×ぽが奥に当たって、おかしくなりそうぅ」
甘い声で叫ぶ憂妃。
その声を聞いていると、秀隆もますます興奮してくる。
「ねぇ、正常位でしたいんだけどいいかな?」
と、秀隆は提案する。
あまりセックスをしてこなかったので、既にイキそうなのである。
イクときは騎乗位ではなく、何となく正常位でありたかった。
「わかりました。じゃあ正常位にしましょう」
憂妃は一旦ペニスを抜くと、自分が仰向けに寝そべって足を開いた。
それと入れ違いになり、今度は秀隆が起き上がる。そして、自分のペニスを手で支え、憂妃のヴァギナに押し当てる。
「挿れるよ」
「はい、思い切り気持ちよくさせてください」
ペニスを挿入し、そのまま勢いよくピストンを続ける秀隆。
とにかく気持ちがいい。もっとこの快楽を味わっていたい。
「おま×こが気持ちいい。もっと突いて激しく犯してください」
「うぉぉぉ」
「あん、ひぎぃ、イクぅ」
「僕もイキそうだよ、どこに出せばいい?」
「あん。中に出してください。私が全て受け止めますから」
「いいんだね、中に出すよ」
次の瞬間、圧倒的なオルガスムスを感じ、勢いよく射精する秀隆。
憂妃の膣内に、精液が流れ込み、ドクドクと満たしていく。
こうしてセックスは終わりを迎えた――。
「君は何者なの?」
セックスが終わり、そのように秀隆は尋ねた。
「あなたは初詣で神様を救ったんです。そして、その神様がお礼として私を遣わせました。ですから、これから私があなたの恋人になります」
(あの老人が神様……、う、嘘だろ)
信じられる話ではない。しかし、事実奇跡は起きている。
「本当に彼女になってくれるの?」
「そうです、これからずっと一緒です。どうです? 交流を深めるために、もう一度セックスしませんか?」
元日の夜は、こうして更けていく。
二人の愛はこれからも続く――。
〈了〉
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