連載官能小説『女性向け風俗』第1回
戸坂栄太は大学を卒業し、一般企業に入社したが、一年も経たずに辞めてしまっていた。なんとなく、社会に適応しない。そんな思いがあったからこそ、彼は早々に会社を辞めてしまったのである。
次の仕事もすぐに見つかるだろう。彼はそう考えていた。どの業界も人手不足で喘いでいる。なら、自分だってどこかの会社に入れるはずだ。と、楽観的に考えていたのである。しかし、現実は甘くなかった。
栄太は数多の企業を受けるが、全く採用されず、仕事を辞めてから約三カ月が経とうとしていた。もう、それほど貯金は残っていない。何とかしなければならないのに、どうしていいのかわからないのだ。
そんな時、彼はある求人を見つけた。
『健康な男子募集! 月収20万円を約束』
どんな仕事なのか、よくわからないが、仕事を選んではいられない。栄太は藁にも縋る重いで、この求人に応募してみた。ここから、彼の人生は大きく変わることになるとは知らずに……。
「ようこそ、グッドライフカンパニーへ」
とあるビルの一室。小ぢんまりとした空間の中に、栄太は座っていた。
彼はグッドライフカンパニーという謎の会社の面接を受けに来ている。そこで、衝撃的な話を聞いた。
「手前どもは、女性向けの風俗を経営しています。そこで働く男性キャストを募集しているのです」
女性向け風俗? 話には聞いたことがある。キャストというのは、つまり風俗嬢の男性バージョンという意味だろう。参った。完全に参った。変なところに来てしまったという後悔の念が栄太を覆っていく。
「はぁ、あの、俺ちょっと間違えたみたいで」
「間違えた?」
「そ、その、風俗って知らなかったものですから」
栄太は素直にそう言った。
これで解放されるだろう、そんな風に思っていた。流石に風俗で働くのは気が引ける。まだ、二十三歳と若い栄太は、別の真っ当な業界で働きたいと考えていた。
「ふむ。しかし、これも何かの縁です。ぜひ、あなたにはやってみてもらいたい」
意外なことに、この男性社員は栄太を引き留めたのである。
正直、栄太は困惑してしまう。風俗で働く気はないのに。
(参ったな、どうしたらいいんだろう)
「これはあなたにとってもいい話なんですよ」
男性はそう言った。
「いい話ですか?」
「そうです。人のために約立てる仕事です。きっとやりがいも出てくるでしょう。どうです、まずは一カ月働いてみませんか?」
断るに断れない状況ができてしまった。
結局、栄太は承諾してしまう。彼はこうして風俗店の男性キャストとなった。
グッドライフカンパニーが展開している女性向け風俗は、簡単に言うと、女性版のソープである。つまり本番がありなのだ。
栄太はそれほど絶倫というわけではない。恐らく、2、3回イってしまったら、もう勃たなくなるかもしれない。それで仕事になるのか不安だったが、彼は仕事に赴いた。
客からの指名があると、そのまま部屋に出ていって、女性と一緒にプレイをするという流れである。
(はぁ、憂鬱だなぁ)
控室で待っていると、栄太は堪らない憂鬱感に襲われた。やりたくない。早く帰りたい。そんな思いばかりが頭を駆け巡るのだ。
やがて、栄太に指名が入った。栄太は童貞ではないが、女性経験が豊富なわけでもない。だからこそ、カチコチに緊張していた。
控室から出ていき、トビラをくぐった先に客である女性がいる。
(どんな人なんだろう。きっと、こんなところに来るくらいだから、ブサイクなのかもしれない)
栄太がトビラを開き、女性を出迎える。
すると、彼の想像とは全く別のタイプの女性が立っていた。
一言で言えば、美人である。スタイルもかなり良く、ファッションモデルのようにも見える。
ベージュのトレンチコートに、スリムな黒のパンツ。足元は黒んパンプスであり、髪の毛はややライトブラウンの明るめ。長さは肩くらいまである。かなり手入れをしているのか、艶のある髪の毛であった。
「こ、こんにちは」
ぎこちなく会釈をする栄太。彼は女性を部屋まで招き入れる。
プレイをする部屋は、それなりに広い。清潔なベッドに、浴室が付いたシンプルな部屋である。
栄太は女性をベッドの上に座らせると、簡単に自己紹介をした。
「どうも、栄太です。今日は宜しくお願い致します」
丁寧にあいさつすると、女性は深く頷き、
「はい、ありがとうございます。そ、その、私、こういうところ初めてで」
「そうなんですか? まぁリラックスしてください。まずはシャワーを浴びましょうか?」
そう言い。女性を浴室に案内する。
シャワーを捻りお湯を出すと、辺りは湯気で包まれていった。
「服を脱いでこっちに来てください」
栄太も服を脱ぎ、全裸になる。
女性は恥ずかしそうにしていたが、やがて覚悟を決めて服を脱ぎ始めた。
本来、女性の服を脱がすのは栄太の仕事なのであるが、彼は初めての客ということもあり、すっかり業務を忘れていたのである。
女性の裸体は神々しいほど、完成されていた。スリムな肉体であるのだが、決して細すぎるわけではなく、適度に脂肪が付いている。女性らしい体のラインがしっかりと形成されているのだ。
シャワーを使い、女性の体を丁寧に洗っていく。風俗は時間制限があるので、あまり長い間入浴に時間は割けない。さっと体を洗いあげると、タオルで女性の身体を拭き、ベッドに移動する。
「あ、あの、栄太さん。実は今日はお願いしたいことがあって」
不意に、女性がそんな風に言った。
「お願いですか?」
「はい。そ、その、私、セクハラされているかもしれないんです」
「は、はぁ……セクハラですか」
確かに、この女性ほどの美貌があれば、セクハラされても仕方ないような気がする。栄太はそう思ったが、口には出さず話を聞いた。
「まだ、確実ではないんですけど、もしかするとセクハラかもしれないんで、確認してほしいんです」
「確認?」
「はい。実際に私が受けた行為を、本当にセクハラかどうか確かめてほしいんです」
「まぁそれはいいですけど」
「よかった、じゃ、お願いします」
「わかりました。それで具体的にどんなことをされたんですか?」
「実は、私の会社の上司なんですけど、私が肩こりが酷いっていったら、マッサージしてやる言ってくれたんです」
マッサージか。栄太は続けて話を聞く。
「でもそのマッサージがちょっと変っていうか、おかしいんです」
「おかしい?」
「はい。マッサージをするだけなのに、ブラを外せって言うんです」
「確かにおかしいですね。それで外したんですか」
「えぇ一応、上司の命令ですから」
「それでどんなマッサージを?」
「実際に言うんで、栄太ささんがそれを真似てやってみてくれますか?」
「わかりました」
「まずは、肩を揉まれました。ゆっくり揉んでみてください」
栄太は言われるままに肩を揉み始めた。女性の肩はかなりこっている。恐らく胸が大きいからこってしまうのだろう。
「次に、服の中に手を入れられました」
「服の中に? こ、こんな感じですか?」
栄太は襟元から手を突っ込み、女性の肌に触れた。しっとりとした肌の質感が栄太の手のひらに伝わる。
「そ、そんな感じです。それで胸を揉まれました」
「な、なんですって胸を……。そ、それはけしからん」
「ちょっと触ってもらえますか?」
「え、いいんですか?」
「そうしないとセクハラかどうかわからないし」
「やってみましょう」
栄太は胸の方に手を異動させた。ブラジャーを外しているので、胸の柔らかさがダイレクトに伝わる。
「それで、どうされたんですか?」
「胸を直に揉まれました。やや強めに」
栄太はやや強めに胸を揉み始めた。
「くぅ、うぅ、そ、そんな感じです。その後、乳首をコリコリと刺激されました」
「ち、乳首を、い、弄ればいいんですね」
「やってください」
栄太は乳首を指でつまむと、それをコリコリと刺激し始めた。女性の乳首は硬くなり、ぷくっと膨れ上がった。
「アン、そ、そんな感じです。そのまま乳首と胸を同時に揉まれたんです。このままやってもらえますか」
栄太は胸を揉みしだきながら、女性の反応を待った。
女性は胸が性感帯なのか、ガクガクと体を震わせ始める。
「い、いい感じです。そんな風に胸を揉まれたんです」
「そしたらあなたはどうなったんですか?」
「わ、私、あまりに気持ちよくなってしまって、……そ、その、つまり、イってしまったんです」
「なら実際にイってみましょう。俺が胸を揉み続けるんで、イってください」
「いやぁん、ほ、ホントにイッちゃいますぅ」
女性は体を痙攣させると、そのまま多く反り返った。
栄太は懸命に胸を揉んでいた。女性の豊満な乳房を揉み、さらに乳首を刺激する。それだけで、彼も気持ちよくなり始めた。
これはセクハラか……。
確実にセクハラだろう。マッサージするのはわかるが、流石に胸をダイレクトに触るのはセクハラ以外何者でもない。
「ひゃん、もう、駄目、イク、イッちゃいますぅ」
女性は快感の声を上げると、そのまま果ててしまった。
ガクッと力が抜け、栄太にもたれかかってくる。
「ど、どうですか? これってセクハラですか?」
女性は恍惚とした表情で呟いた。
栄太はそれを受け、正直に答える。
「セクハラだと思います。完全に……」
「やっぱり……。でも、別のこともされたんです」
「別のこと?」
「そうです。それも実践してみていいですか? 栄太さんが確かめてくれると、ありがたいのですが」
「僕でよければ協力しますよ」
「ありがとうございます。実はこのマッサージには続きがあったんです」
「続き?」
「はい、それをこれからお話しします」
女性はそう言うと、栄太を真剣な表情で見つめ、やがて語り始めた――。
〈続く〉
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