連載官能小説『大胆過ぎるメイド妻』第1回
「辛くなったら、いつでも俺が励ましてやるから」
「え?」
「だから、辛くなったら俺の所に来い。そうすればきっと元気になるよ」
「あ、ありがとう……」
それは須藤美琴が13歳の時の話。
彼女は学校で虐めを受けていて、不登校になっていた。
そんな中、近所に住む貝塚元気に、励ましてもらったのである。
その時の記憶を、美琴は決して忘れない。
今も、峻烈に輝いており、彼女を心の底から勇気づける。
(元気さん。今も元気かな……)
ふと、美琴は考える。
彼女は今年19歳になった。
現在は大学に通い、経営学を勉強している。
中学時代は不登校で過ごしたが、高校は心機一転で頑張り、なんとか大学まで進学できたのである。これも、元気のおかげであると美琴は感じていた。
そもそも、美琴と元気の両親は、お互いに仲が良く、よく一緒に活動していた。だからこそ、その子供である元気と美琴も必然的に、よく顔を合わせるようになったのである。美琴が元気と出会ったのは、まだ幼少のころ。確か、3歳くらいだったと記憶している。
実は、美琴が赤ん坊のころにも元気には会っていたのであるが、物心がつかないでいたので、彼女には記憶がない。一番古い記憶が3歳の時の話で、プリンを食べさせてもらった思い出があるのだ。
美琴と元気は歳が11歳離れている。
だから、美琴が3歳の時、元気は14歳であり、中学生という多感な時期を生きていた。元気自身も美琴が好きで、よく構っていた。彼には兄弟がいないので、美琴を実の妹のように扱っていたのである。
そんな元気であったが、彼は今年三十路を迎えた。
社会人になり、もうすぐ10年目を迎えようとしている。大学を卒業し、彼は、洋服の生地を扱う会社に入社した。そこの営業職として、各ブランドのデザイナーや企画職の人間に生地を提案し、仕事を共にしている。
決して、ファッションが好きだったわけではない。ただ、なんとなく就職活動をしていたら、今入社した会社に採用をもらっただけである。つまり、成り行きで仕事を選んだ。それでも、何とかやっている。少しずつ仕事にも慣れ、今では重要な仕事を任されるくらいになったのだ。
この先も、生地を売って生きていく。そんな風に感じていた。
当たり障りのない生活を送っていた元気であったが、彼には悩みがあった。それは彼女がいないという悩みである。
彼は恥ずかしながら、これまで一人の女性とも付き合った経験がない。性体験は、風俗で体験しているが、素人童貞というやつである。それに、30歳を過ぎたころから、親から「結婚はまだか?」と、急かされることが増えた。
確かに、同級生の中には結婚した人間も数多くいる。既に子供がいる人間も多いし、そんな人間たちをみると、どこかやるせなくなってしまう。結婚がすべてではない。今の時代、離婚率も高いから、結婚したからと言って、幸せになれるわけではない。むしろ、不幸になることだってあるだろう。
それでも、未だに彼女の一人できない自分に、激しい憤りと、焦りを感じていたのも事実である。
(どうして俺ってダメなんだろう……)
そんな風にして、劣等感が襲い、負のスパイラルに突入する。これでは、いつまで経っても結婚などできないであろう。
ある日曜の朝――。
仕事も休みであり、朝はゆっくりしている。基本的に生地を扱う会社は、9時に出社しなければならない。そのため、必然的に朝は早くなる。この辺は、普通の社会人と一緒である。だからこそ、休みの日くらいゆっくりしていたい。元気は惰眠を貪っていた。
彼が微睡んでいると、微かに部屋のトビラが開いたような気がした。しかし、眠気が勝っているので、特に何かしたわけではない。依然として、彼は眠ったままである。
「起きてください、元気さん」
ふと、女性の声が聞こえる。
それもどこかで聞いたことのある声。
これは一体……。
だが、元気は起きられなかった。疲れもあり、まだ少し眠っていたかったのである。
声は聞こえていたが、彼はそのまま眠り続けた。
すると、突然股間部分に淡い刺激がチクチクと感じられた。
「ん、ちゅぱ、にちゅ……」
その刺激は、どこまでも心地いい。雲の上をふわふわと浮いているような感覚が直走る。同時に、マスターベーションをしているかのような気分にもなるのだ。
元気は、これまでに夢精を経験したことが何度かある。その時は、夢の中でエッチなプレイをして、そのまま果ててしまったのである。その結果、射精して下着を汚していた。今回も似たような感じかもしれない。
夢精は、とても気持ちいい。夢見心地で感じる悦楽は、どこまでも気持ちよくなってしまうものだ。だからこそ、元気は少しだけ夢精を気に入っていた。今回も夢精できるのであれば、エッチな夢を見て果ててしまいたい。彼はそんな風に考えていた。
夢と現実のはざまを行ったり来たりして、彼は微睡んでいる。ただ、少しだけ様子が違う。夢精が描く夢としては、かなりリアルなような感じがするのだ。女の息遣い、そして、迸る馨しい香り。それらは圧倒的なリアリズムに満ちていて、元気を刺激するのである。
(アッ、なんか気持ちいいぞ……)
ペニスが固くなっていくのがわかる。血流が一気に流れ込み、ペニスが熱く反応を示す。ギンギンに膨れ上がったペニスの先端から、カウパー腺液が流れ出した。
「んぐ、むぐ、にちゃ」
突然、ペニスが熱い何かに包まれた。
トロトロとした粘膜のようなものに包まれて、とにかく気持ちよくなってしまうのである。
起きるべきだろうか? 否、この心地いい夢をもっと感じていたい。そう感じた元気は、そのままぐったりと体を預けていた。依然として、心地いい悦楽が体中を支配している。ビクビクと、ペニスが小刻みに動き、暖かな粘膜の中を漂っている。
次第に、激しい射精感が競り上がってきた。
最近、仕事が忙しくてマスターベーションができずにいたのである。そのため、ふとした刺激で、すぐに果ててしまいそうになる。グググとペニスが小刻みに蠢き、脈動が強くなる。やがて、淡いアクメが襲ってきて、彼を恍惚とさせる。
(あぁ、出る、出そうだ……)
尿道を精液が駆け巡っていく。
その快感と言ったら、マスターベーションの比ではなかった。圧倒的な悦楽が、彼を支配していくのである。
ビュルビュル……ドピュ……。
激しく牡の欲望を放出する元気。溜まっていた精液がどくどくと流れ出す。
「んん、んぐ……」
発射された精液は、何か膜のようなものに包まれていく。つまり、依然としてペニスは温かいままなのだ。突然、ペニスを激しく吸引された。
チュウチュウと吸われ、精液を最後の一滴まで絞り取られる。
(あぁぁ、凄い気持ちいいぞ、これは堪らない)
微睡みながら、元気は感じていた。
そして、しばらく快感に余韻に浸っていると、耳元で微かに声が聞こえた。
「元気さんのせーえき、とっても濃くて美味しかったですよ。ウフフ」
その声は、どんどん遠くなっていった。
再び、室内はしんと静まり返り、元気は眠りの海へと落ちていった。
結局、元気が起きたのは、気持ちのいい体験をしてから、1時間ほど経ってからであった。ムクッと起き上がると、僅かにペニスに痛みがあった。マスターベーションをした後、再び勃起すると、僅かに痛みがある、あの感覚である。
(夢精したのかな……)
そう考え、元気は自らのペニスに触れる。通常、夢精したのであれば、下着の中は精液で塗れているはずである。しかし、今回はそんな風になっていない。綺麗なままなのである。オルガスムスを感じても、射精しないケースが極稀にあるのだという。その事実を、元気は知識として知っていた。もしかすると、今回はそのレアケースに当たったのかもしれない。
彼は起き上がり、徐にリビングへ向かった。
元気は現在一人暮らしをしている。東京都内で暮らす彼は、大学まで実家暮らしをしていたのであるが、社会人になったのを機に一人暮らしを始めたのである。仕事が忙しいときは、ほとんど自炊ができないので、もっぱらスーパーの総菜や、コンビニのお弁当になる。ただ、今日は何も買ってきていない。つまり、家には食べ物がないのだ。何か買いに行かないとならない。
(面倒だな。昨日のうちに買っておけばよかった)
昨日は土曜日だったが、急に仕事が入ってしまい、遅くまで働いていた。そのため、スーパーやコンビニ行く時間がなく、何も買えずにいたのである。
しかし、彼は驚いた。リビングのトビラをあけると、ふんわりといい香りが漂ってきたのである。それはキッチンの方から漂っている。同時に、ジュージューという何かを焼く音が聞こえている。
(あれ、誰かいるのか?)
未だに少し寝ぼけている彼は、一人暮らしの家に誰かいる事実にあまり驚かなかった。しかし、徐々に頭が冴えてきて、違和感を覚え始めた。
「だ、誰だ!」
キッチンに向かって大きな声を出す元気。
すると、キッチンに立っている人物がビクッと体を震わせた。
「あ、起きたんですね。元気さん。おはようございます」
キッチンに立っているのは、なんと女であった。
それも普通の女ではない。メイド服を着用した女なのである。それも目が覚めるほど美しい。黒地がベースのメイド服に、純白のフリルがついたエプロンを着用している。頭には白地のレースのカチューシャをして、ライトブラウンの髪の毛が綺麗にまとまっている。
そして、元気はこの女に見覚えがあった。記憶を手繰り寄せ、彼はとうとう声を放つ。
「き、君はもしかして美琴ちゃん?」
美琴ちゃんという言葉を聞き、女はにっこりと笑みを浮かべる。
「はい、そうです。須藤美琴です。お久しぶりです。元気さん」
「やっぱり美琴ちゃんか。でもどうしてここに、確か大学に通っているって聞いたけど」
「はい、今大学生です」
「そう、で、どうしてここに?」
「嫌だなぁ、元気さん、そんなの決まっているじゃないですか。ここで暮らすことに決めたんですよ」
そう言い、美琴は軽くウインクして見せた。
「こ、ここで暮らすって……。でも、俺の家だけど」
「知ってます。だから、元気さんの奥さんになるんです」
奥さん……。
その言葉は、元気を驚かすに十分な破壊力を持っていた。
「え、えぇぇぇ、お、奥さん……」
元気の絶叫が轟き、リビング内は興奮の渦に包まれた。
〈続く〉
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