連載官能小説『旅先で出会った女』第1回

連載官能小説

連載官能小説『旅先で出会った女』第1回

佐伯豊は、それまで働いていた会社を辞め、別の企業へと転職をした。既に30歳を過ぎている彼にとって、大きな決断だったに違いない。彼は、テキスタイルという、洋服や雑貨の生地を扱う会社で働いていたのであるが、突然何だか虚しくなって、別の業界の仕事を探し始めた。

できるのであれば、人の役に立つ仕事がしたい。もちろん、テキスタイルの仕事だって、誰かのためになるはずである。ただ、もっと形として残るような仕事がしたかった。そんな彼が選んだ仕事は、介護施設の調理補助というものである。

料理を通して、人を元気にさせたい。そう考えたため、豊は全くの別業種に挑んでいったのである。収入は減ってしまう。しかし、それでもよかった。何というか、人の役に立てるような気がしたのである。

そんな風にして、彼は転職活動をして、無事就職を決めたのであるが、実際に手続きやら何やらがあり、新しい仕事を始めるのは、1カ月先になってしまった。既に、テキスタイルの会社は、引継ぎを終えて、無事に退社している。つまり、1カ月フリーである時期ができたのである。

微々たるものであるが、退職金が出て、少しくらいなら贅沢ができる。ずっと忙しい日々を送ってきたから、これを機会に、旅行に出てみてもいいかもしれない。と、豊は考えていた。

そして、豊は新潟県に行ってみることに決めた。神奈川県に住む豊かにとって、旅行と言ったら、熱海や箱根が定番であった。だが、そんな決まり切った土地には行きたくなかった。ただ、漠然と米どころである新潟県が思い浮かんだ。

東京駅から新潟駅まで新幹線で2時間弱である。つまり、結構近いのである。新幹線代もそれほど高くならない。2泊くらいして、ゆっくりと羽を伸ばそう。と、豊は考えていた。

季節は9月。もうすぐ10月という時期である。新潟の観光シーズンがいつかは知らないが、この時期ならそれほど混雑はしていないだろう。それに、知らない土地をただぶらぶらするだけでもいいストレス発散になる。目的も持たずに、彼は宿を予約して、新幹線に乗った。

午前中の新幹線に乗り、午後一番に新潟に到着する。

新潟の玄関口である新潟駅は、かなり大きな駅であり、駅前には繁華街が広がっているようであった。宿は駅のすぐ近くにある。とりあえずチェックインを済ませておくものいいだろう。

彼はホテルに向かい、予約した部屋で少し横になった。

決して疲れているわけではなかったが、横になると、瞼が重くなってきた。そして、そのままうとうととしてしまい、眠りの海へと落ちていった。

次に目が覚めると、既に日が暮れていて、部屋の中は薄暗くなっていた。パッと起きて、時刻を確認する。すると、午後7時を回った時分であった。つまり、5時間ほど眠ってしまった計算になる。

(せっかくに旅に来たのに、寝てしまったら元も子もないな)

ポリポリと首元を掻き、彼は一旦シャワーを浴びた。

浴室はトイレと一体化したユニットバスであった。

蛇口を捻り、熱いシャワーを浴びると、幾分か眠気が吹き飛び、気分がしゃっきりとしてきた。

シャワーを浴びて、清潔な下着とシャツに着替えた豊は、そのまま駅前を散策してみようと考えた。確か、結構色んな店があったように思える。どこかで食事をしてもいいかもしれない。ただ、気ままにぶらぶらしてみよう。

ホテルの受付で鍵を預け、そのまま駅前に繰り出す。

今日は平日であるため、仕事終わりのサラリーマンの姿が多かった。そんな人波を塗っていくように歩いていくと、駅の近くに洒落たバーがあるのがわかった。豊は、バーに行った経験がない。彼の住む神奈川県にもたくさんのバーが存在するが、彼はそんなところに足を踏み入れたことがなかった。

(バーか……。行って見てもいいかもしれない)

どうせ時間はある。酔いつぶれてもホテルで寝ていれば全く問題はない。

そう考え、彼はバーの入り口を潜った。

ショットバー『如月』と書かれている。

店内は薄暗く、気の利いたジャズがかかっていた。彼はジャズには全く詳しくないが、その時かかっていたのは、セロニアス・モンクであった。

カウンターが8席程度、そして、テーブル席が4席ある。比較的小さなバーであった。一人で来店した豊は、カウンターに座り込んだ。バーのカウンターの奥には、マスターらしき人物と、若い男が忙しそうに動いていた。

普段、あまり酒を飲まない豊は、このような場所で何を頼めばいいのかわからなかった。ただ、メニューを見せられて、知っていたカクテルを注文した。それはジントニックである。

それと、つまみにミックスナッツを頼んだ。酒が進んで来たら、何か食べるものを頼んでもいいかもしれない。

ジントニックをちみちみ飲みながら、彼はこの先のことを考えていた。果たして、上手く仕事ができるだろうか? 全くの異業種に挑戦するのである。不安は尽きない。それでもただやっていくしかないだろう。

そうこうしていると、店に女性が入ってきた。どうやら客のようで、さらに一人であった。恐らく、まだ20代であろう。スラっとした体躯に、肩までのロングヘアーがよく似合っていた。白のロング丈のワンピースに、上はシックな黒いジャケットを合わせている。

(キレイな人だな……)

と、豊は思った。

事実、その女性は美しかった。

「隣、いいですか?」

意外なことに、女性の方からそういう提案があった。

もちろん、嫌とは言えない。彼は承諾する。

「どうぞ、構いません」

「ありがとう」

女性は、マッカラン12年の水割りとチョコレートを注文した。

そして、ふと視線を豊かに合わせた。

「新潟の人ですか?」

と、女性が言う。

それに対して、豊は答える。

「いえ。僕は神奈川の人間です。ちょっと旅行でこの土地に来たんです」

「やっぱり、どこか都会的な雰囲気がするから」

「はぁ、そうですか」

女性の元にお酒とチョコが置かれる。女性は一口飲むと、さらに言った。

「5万ってとこかしら?」

「え?」

「ねぇ、5万円で私を買わない?」

「売春ですか?」

「まぁそんな感じ……。どう?」

丁度財布の中には10万円入っている。ホテル代は既に支払っているから、後は好きに使えるお金である。何となく、女性に自分の懐を見られているような気がした。

「僕、金で女を買ったことがないんです」

「そう。なら私を初めてにすればいいじゃない」

「何というか、金で女を買うって行為に、引け目を感じているっていうか……」

「面白いわ。あなた。ぜひ、私を買ってちょうだい。悪いようにしないから」

豊はどうするか迷った。ただ、女性があまりに強引だったため、彼は彼女の申し出を承諾したのであった。つまり、彼女を5万円で買ったのである。

バーを出た二人は、直ぐにホテルへ向かった。丁度、休憩料金の安いホテルが近くにあったのである。

一晩の関係。まぁそれくらいならいいだろう。酒に酔い始めた豊は、何事も経験だと見切りを付けて、彼女と共にホテルに向かった。

ホテルの一室、豊が止まる部屋よりもゴージャスであった。大きなダブルベッドに、浴室も広々としていた。

女はベッドに座るなり、自己紹介を始めた。

「私は由美。あなたは?」

「僕は豊です」

偽名を使うか迷ったが、面倒なので、名前だけ名乗っておいた。

「豊。じゃあベッドに横になって」

「シャワーを浴びなくてもいいんですか?」

「うん。大丈夫よ。私、おちん×んの匂いが好きなの。牡の香りっていうか、とても興奮するのよ」

そういう性癖もあるのか。

豊は感慨深くなり、スッと由美を見つめた。

そして、言われるままに、ベッドに横になる。

対する由美は、上着とワンピースを脱いだ。すると、黒のシックな下着姿になった。ところどころにレースがあしらわれたセクシーさを感じるブラとショーツである。

由美は横になった豊の衣類を一枚ずつ脱がし始めた。

シャツを脱がし、スラックスを下ろす。すると、ボクサーパンツ姿になる。彼のイチモツはまだ勃っていなかったが、少しずつ大きくなり始めていた。

女はボクサーパンツの上から肉竿を触り始めた。優しく繊細なタッチである。それでいて、じんわりと手のひらの熱を感じることができる。

「ウフフ。少しずつ大きくなってきたわ」

「それはそうですよ。この状況で興奮しない男は病気か何かだ」

「下着、下ろしてもいい?」

「はい。大丈夫です」

由美はゆっくりと豊の下着を下ろしていった。

ペニスは熱く反応しており、硬くなり始めていた。女は肉竿を丁寧に握りしめると、そのまま静かに上下運動させ始める。

「うぅ、くぅ……」

思わず、歓喜のため息が漏れる。

最近、マスターベーションをしていないから、刺激がダイレクトに伝わってくる。

「気持ちいいのね。先端からお汁が出てるわ」

「誰とでもこういうことをするの?」

「まさか、私の御眼鏡に適った男性とだけよ」

御眼鏡に適うというのは、通常、目上の人が気に入った人間に対して使う言葉だが、あえて豊は反論せずに、そのまま受け入れた。

「どうして僕なの?」

「う~ん、説明しづらいんだけど、一言で言えば直感。この人なんかいいなって思ったら、誘うようにしてるの。人間、若い時代何て短いじゃない。それなら、楽しまないとね」

「どうして5万円なの?」

「これも曖昧なんだけど、人によって金額を変えているの? あなたの場合、何となく5万円が的確かなって思って、そう言っただけなんだけど」

「僕の懐具合を絶妙に見抜いていて驚いたよ」

「ウフフ、そうでしょ、そういう勘が私はいいみたいなの。さぁ、もっと気持ちよくしてあげるわね」

「それは楽しみだな」

豊はそう言い、やがて来る悦楽の時間に胸を高鳴らせた――。

 

〈続く〉


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