連載官能小説『【美熟女】夫の裏切りに反抗して』第1回 

連載官能小説

連載官能小説『【美熟女】夫の裏切りに反抗して』第1回 

工藤真奈美はやさぐれていた。

彼女は、今年三十八歳になる壮年の女性だ。

二十八歳の時に、取引先の営業マンをしていた男性と結婚したのである。

 

結婚から十年……。

 

幸せなのだろうか?

少なくとも、今は幸せではない。

真奈美は、夫とケンカして、家を飛び出してきたのである。

だが、

ずっとこのままではマズいだろう。

イヤだけど、家に帰る必要があるのだ。

何しろ、真奈美には夫の他に、娘の未来(ミク)がいて、子育てをしなければならないのである。

未来はまだ五歳。

両親の愛情が、存分に必要になる時期でもある。

「ハァ、帰りたくないなぁ……」

そんな風に思った真奈美は、とあるバーに入った。

少し酒を飲んで心を落ち着けたかったのである。

 

ショットバー「ムーン」

 

彼女が住む、●●駅のメインストリートから、裏路地に入ったところに、その店はあった。

「こんなところに、オシャレなバーなんてあったのね」

バーなんて、何年も来ていない。

夫と結婚する前、少しだけ行ったことがあるくらいだ。

結婚してからは、まったく行ってない。

真奈美は店のトビラを潜る。

時刻は午後八時……。

今日は平日だから、店内はそれほど混雑していなかった。

「いらっしゃいませ」

カウンターにバーテンダーらしき人間がいて、真奈美を招き入れる。

彼女は空いていたカウンター席に座り、とりあえずウイスキーの水割りを頼んだ。

といよりも、このような店で何を頼むべきなのか、わからなかったのである。

店内は、落ち着いた雰囲気で、年季の入った気の温もりが感じられる。

BGMはジャズが流れていて、異国に来たように錯覚させる。

(少し飲んだら帰ろう……。それしかない)

夫とケンカしたり理由は、本当に些細なものである。

真奈美は、結婚後、しばらく働いていたのであるが、妊娠を境に退職し、その後は専業主婦である。

家事や育児は、ほとんど彼女がやっていた。

同時に、夫はほとんど手伝ってくれなかったのである。

なのに、夫は自分を召使のように扱う。

 

例えば――。

 

食事の味が薄い

掃除がなっていない

未来の世話をちゃんとしろ

 

など挙げればキリがないくらいである。

今まではただじっと耐えていたのであるが、とうとう爆発してしまった。

夫に食事はまだかと催促され、カッとなってしまった彼女は、キレてしまったのである。

そこから、大きなケンカに発展し、そのまま家を飛び出してきたのだ。

(私が謝らないとダメなのかな……)

考えるほど嫌気がさしてくる。

そんな時――。

「あの、お隣いいですか?」

「え?」

真奈美に声をかけてきたのは、若々しい青年であった。

ビシッと細身のスーツを纏っている。

「よかったら一緒に飲みませんか?」

「でも、私、すぐに帰りますから」

「いいじゃないですか? このお店に女性が一人で来るのって珍しいです。一杯ご馳走しますよ」

 

そう言うと、青年は、チョコレートと、マーテル・コルドンブルーの水割りを二つ頼んだ。

 

「この辺に住んでる方なんですか?」

と、青年は告げた。

真奈美は、どう答えるべきか迷った。

夫とケンカして、やってきたとは、言えそうになかった。

「まぁ、そうですね」

「キレイな人だなって思って」

「そんなこと……、ないです……」

「僕、よくこの店に来るんですけど、あなたに会ったのは初めてですよね?」

「はい、あまり来ませんから。こういうお店には」

 

口説かれているのだろうか?

しかし、自分は既にアラフォーを迎えつつある、オバサンである。

こんなオバサンを口説くもの好きな人間はいないだろう。

「私、帰らないと」

「そうですか。それは残念です。そうだ。これ、僕の名刺です。よかったら、今度改めて飲みに行きませんか? いいお店を知っているんです」

「で、でも、そんな困ります」

しかし、青年は強引であった。

彼は黒革の名刺ケースから一枚の名刺を取り出すと、それを真奈美に渡した。

そこには、こんな風に書かれていた。

 

「●●商事株式会社

営業部 細田俊介

090―●●●●―●●●●」

 

  • ●商事と言ったら誰もが知っている一流企業である。

そんな男性が声をかけてくれた。

真奈美は名刺を受け取り、お礼を言って店を出た。

空は、暗黒に染まっていたが、僅かに星が見えた。

 

帰宅すると、夫が憮然として待っていた。

また、何か言われる。

そんな風に考えると、心が痛くなるのだ。

「どこへ行っていた?」

と、夫は告げる。

対する真奈美は、

「どこだっていいでしょ。頭を冷やしていたの」

「俺がお前を食わせているんだぞ。それを忘れるな」

「わかってるわ。働いているあなたが偉いのよね。私はあなたの召使なんだわ」

「なんだその言い方は!」

「ねぇ、今日は疲れたから、もう寝るわ。また明日になれば、すっきりした気持ちで考えられると思うから」

「ふん! 勝手にしろ」

夫は高圧的な態度でそう告げた。

真奈美は寝室に向かい、娘の未来を寝かしつけ、そのまま眠りについた。

 

翌日――。

夫が出社し、未来を幼稚園につれて行った後、彼女は自宅に戻り、部屋の掃除をしていた。

ふと、夫のスーツを整理していると、そこから、風俗店の名刺が出てきた。

 

「これって……。嘘でしょ?」

 

夫は女遊びをしている。

その証拠を掴んでしまったような気がした。

昨日は帰りが早かったが、最近やたらと帰りが遅くなる時がある。

週末も一人でどこかに出かけるし、きっと愛人を作って楽しんでいるのだろう。

そう考えると、真奈美は嫉妬の炎で焼かれた。

(これは私に対する最大の裏切りだわ)

どうして自分だけがこんな目に遭わなければならないのだろう。

結婚して十年。

夫に尽くしてきたつもりである。

なのに、この裏切り……。

真奈美はテーブルの上に風俗店の名刺を置き、さらに置手紙を書いた。

 

「この名刺を見つけてしまいました。

未来を連れてしばらく実家に帰ります。

真奈美」

 

荷物をまとめ、真奈美は家を出た。

幼稚園に行き、実家の両親が具合が悪いからしばらく帰省すると嘘をつき、未来を連れて実家に戻ったのである。

「ママどこに行くの?」

「おじいちゃんの家よ」

「ホント? やったぁ」

何も知らない未来は、ただ悦んでいる。

実家に戻り、事情を説明すると、とりあえず両親は温かく迎え入れてくれた。

そんな中、彼女は思い出す。

細田俊介という男性の名刺を……。

夫は自分を裏切っていた。

なら、自分だって――。

気が付くと、彼女は名刺の電話番号に電話をかけていた。

 

時刻は午後四時を少し回ったくらいだ。

普通のサラリーマンなら、普通に働いている時間帯である。

(電話、出てくれるかしら?)

淡い期待感があった。

そして、その願いは通じたようである。

「もしもし、細田ですが」

昨日の青年の声。

若々しく、聞いていると落ち着いていく。

「あの、こんな時間にすみません。昨日『ムーン』というバーでご馳走していただいた者です。覚えているでしょうか?」

「もちろんですよ」

「今大丈夫ですか?」

「はい、構いません」

「実は、会いたいんです」

「……」

一瞬の間があった――。

しかし、俊介は、

「わかりました。六時には退社できるので、その後、落ち合いましょう。う~ん、そうだな。六時半に●●駅の改札口で待ち合わせはどうですか?」

彼女の実家は●●駅から離れているが、同じ県内にあるため、物理的に移動は可能である。

「わかりました。六時半ですね? 伺います」

「それでは楽しみにしています」

そう言い、電話は切れた――。

仄かに心が浮き立っているのを、真奈美は感じていた――。

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