連載官能小説『十年後の恩返し』第1回
十年前――。
その時、吉岡秀和は、十歳の少年であった……。
普通の小学校に通う少年であり、責任感が強く、尚且つ優しい。
人望にもあふれており、平和な日々を暮らしていたのである。
そんなある日、秀和は公園に捨てられていたネコを発見する。
彼の家は団地である。
したがって、ペットは飼育できない。
だが、秀和はこの捨て猫を救いたかった……。
秀和は、毎日餌を持っていき、捨て猫に与えたのだ。
その結果、弱り切った捨て猫は、やがて回復し、一人でも行動できるようになったのである。
彼と捨て猫の奇妙な関係は、一カ月ほどであったが、秀和は捨て猫に接することができて、本当によかったと感じていた。
それから十年が経ち、秀和は二十歳を迎えたのである。
十年後――。
秀和は大学進学のため、上京し、一人暮らしを始めていた。
十八歳の時に上京したから、今年で二年目である。
都心にも近いということで、部屋の面積は狭い。
それでも、自分だけの城ができたということもあり、彼は一人暮らしを満喫していた……。
進学した大学も有名な私立大学であり、それまでの苦労が報われた形になっていたのである。
だが、問題もあった。
その問題とは?
「彼女がいない」
と、いうものであった。
そう。
心優しき少年、秀和には彼女がいないのである。
それも、
生まれてこの方、一度も女性を付き合ったことがないのだ。
手をつないだり、キスをしたりしたことだってない。
もう二十歳にもなるのに……。
恐らく、普通の二十歳になれば、お付き合いしている女性がいたとしても何ら不思議ではない。
むしろ、付き合っている女性がいるのが当たり前であろう。
当然、性体験だってしていてもおかしくはない。
なのに……。
(俺は未だに童貞だ)
と、気分が暗くなる。
昔、二十歳になるまでに初体験を済ませたいと、考えていた時期がある。
しかし、それは叶わなかった。
と、いうよりも、このままではいつになったら童貞を卒業できるのかわからない。
何というか、漠然とまだまだ先になるのではないか?
そんな暗い未来が待っているような気がしたのである。
だが、彼の前に天使が現れる。
それは、大学が夏休みを迎えた、大学二年の夏の話である。
ある日――。
秀和は、大学が夏休みになったのだが、まだ地元には帰らなかった。
スーパーでアルバイトをしていたし、実家に帰省するのはお盆になってからもいいと感じたのである。
それに、大学から出された課題もやらないとならない。
有名な私立大学というだけあって、なかなか授業のレベルも高いのである。
彼は極々普通のワンルームマンションで暮らしている。
今のところ、近隣住民とも上手くいっており、悠々自適に暮らしているのである。
そんな中、秀和の隣の部屋に、新しい住民が引っ越してきた。
それも女性である。
引っ越しの荷物を運ぶ最中、彼は新しい住民らしき人間の顔を見た。
すると、超絶な美人がそこにいたのである……。
恐らく、年は二十代後半から三十代前半というところであろう。
お姉さん系の女性が好きな秀和にとって、ドストライクだったのである。
その女性は、身長は一六〇センチくらいと、普通くらいの身長であるが、スタイルは素晴らしくいい。
バストはしっかりと高さがあるし、ウエストからヒップにかけてのラインが素晴らしい……。
程よく肉感のあるボディは、女性らしさで満ちており、西洋絵画の聖女を思わす。
髪の毛の長さは肩までのセミロング。
色はやや茶色だが、雰囲気によくあっており、決して下卑たようには見えない。
服装は荷物運びをするためなのか、パンツスタイルである。
ピッタリと足のラインを拾うスキニージーンズに、トップスはシンプルなロングTシャツを着用している。
女性らしいカラダのラインが強調されて、とても素敵だなと感じていたのだ。
秀和は、ぼーっとその女性を見つめてしまった。
まさかこんな女性が、このマンションに引っ越してくるとは……。
嬉しくて堪らなかった。
部屋に戻った秀和は、ふとあの引っ越してきた女性を思い出す。
女優のようなルックス。
少しネコっぽい雰囲気があり、それがまた妖艶である。
また、モデルのようなスタイル。
全てがパーフェクトであると感じた。
彼女を想っていると、ペニスが熱く反応していくのを感じていた。
「今日はあの女性をおかずにオナニーしようかな……」
と、思わず大きな声が出てしまう。
そのくらい。あの女性は秀和の琴線に触れたのである。
夕方になり、秀和が夕食の準備を始めようとすると、来客を告げるインターフォンが鳴った。
こんな時間誰だろうか?
何かの勧誘かもしれない。
居留守を使うという手段も取れたが、根が真面目な秀和は、調理をいったん中断し、ドアの方へ向かった。
トビラを開けると、意外な人物が待っていたのである。
それは、日中引っ越してきた例の女性であった。
「どうも。私、工藤玲子と言います。引っ越してきましたので、そのご挨拶に」
「あぁ、わざわざどうも。俺は、吉岡秀和です。どうぞ宜しく」
簡単に挨拶を済ませると、玲子は菓子折りを秀和に渡した。
引っ越しの挨拶として持参したのであろう。
なんだか逆に申し訳なくなるが、断るのもおかしな話なので、ありがたく頂戴することにした。
キレイな声である。
素直にそう思った。
しばしその美貌に見惚れていると、玲子が告げる。
「こんなに大きくなって」
「え?」
「いえ、何でもありません」
意味深なセリフを告げた玲子。
どこかで会ったことがあるのだろうか?
記憶を巻き戻してみるが、全く記憶にない……。
「あの、私をおかずにオナニーするっていうのが聞こえてしまったんですけど、それって ホントですから?」
その言葉を聞き、秀和のカラダに電流が走る。
このマンションは、一応鉄筋の作りなのだが、壁が薄く隣の音が結構よく聞こえてしまうのだ。
そのため、昼間口走った淫語が丸聞こえだったのである。
慌てた秀和は、しどろもどろになりながら、
「あ、いえ、そ、それは、違います。何でもありませんから」
「いいんですよ。私、嬉しいです。こんな冴えない私に興奮してくれて」
「そんな冴えないだなんて」
冴えないとは謙遜のし過ぎである。
むしろ、テレビに出ていてもおかしくないくらいの美貌なのだ。
首元をポリポリと掻きながら、秀和がどうしようか迷っていると、玲子が一歩前に進んだ。
そして――。
玄関をくぐり、トビラを閉めると、秀和の前にしゃがみ込み、何と彼の穿いているズボンを脱がし始めたのである。
一瞬、何が起きているのかわからなかった……。
間があって、すぐに事態に気づく。
自分はズボンを脱がされている。
おまけに、玲子はボクサーパンツまで脱がしにかかったのである。
あまりに突然のことだったので、ペニスはまだ小さなままであった。
それを見た玲子は、クスッと笑みを浮かべながら、ペニスを手のひらで包みこんだ。
温かな質感が、ペニスを通じて全身に広がっていく。
(うぉ、ち×ぽを触られてる)
童貞である秀和は、女性にペニスを弄ってもらった経験がない。
自分で弄るよりも、繊細な印象がある。
「今、大きくしてあげますからね」
と、玲子は告げて、ペニスを上下に扱き始めた。
〈続く〉
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