連載官能小説『マッチングアプリから始まる恋』第1回

連載官能小説

連載官能小説『マッチングアプリから始まる恋』第1回

冴えないサラリーマンである宮田大地は、今年四十歳を迎えた。

大学を卒業してから、とある商社に入社し、そのままずっと働いている。

しかし、出世とは無縁である。

同期の人間が、次々に出世していくのを、ただ黙ってみていた。

自分には力がない。

しようがない。

そんな風に思っていたのである。

彼の趣味は、宝くじを買うことであった……。

もちろん、それまでに当たったことなどない。

しかし、毎回百枚ほど購入し、当選を夢見ていたのである。

とある年末――。

彼は年末の宝くじを購入した。

後は年明けの発表を待つだけである。

もちろん、当たっているとは思えない。

宝くじというのは、文字通り夢を購入する……。

つまり鼻から当たるとは思えないのだ。

ただ、今回は違っていた。

神様が微笑んだのである。

(嘘だろ……)

と、大地は新聞の当選番号を見て、唖然とした。

彼はいつも連番五十枚、バラ五十枚を購入するのだが、なんと、連番が当たっているのだ。

それも、一等の十億円である。

開いた口がふさがらないというのは、まさにこのことであり、とにかく驚いてしまった……。

(一等が当たるなんて)

そこから、彼の生活は一転した。

まず、百万円ほど下ろして豪遊したのである。

高級レストランに行き、食事をして、高級ホテルに泊まる旅行をして……。

そんな風にして使ったのだが、すぐに虚しくなった。

彼は人恋しいのである。

四十歳になっても、未だに独身。

最後に彼女ができてから、十五年以上が経過していた。

性処理は、もっぱら風俗や手淫である。

彼には行きつけのソープランドがあり、そこのエレナという泡姫がお気に入りだったのだ。

だった……。

と、過去形なのは、エレナは既に店を辞めており、どこに行ったのかわからない。

お気に入りだったエレナいなくなり、彼はソープランドにも行かなくなった。

それ以降、性処理は手淫がメインになったのである。

とにかく虚しい。

大地はそんな風に考えていた。

 

そんなある日――。

彼は新聞の広告で、とあるマッチングアプリの存在を知る。

今話題の、男女の出会いを提供してくるアプリである。

金ならある。

何しろ、十億円当たったのだから。

彼はマッチングアプリに登録すると、女性を探すために色々と骨を折った。

ただ、なかなか出会えない。

マッチングアプリは、基本顔出ししないと効果が出ない。

しかし、ルックスがよくなく、仕事も平凡な四十歳の男に、食いつく人間は皆無だったのである。

お金のことをチラつかせる必要があるかもしれない。

ただ、十億持っていることが知られると、変な人間からのアプローチが増えると思って、彼は何もしてこなかったのである。

そんな風にして月日が流れると、ある女性からメッセージが入った。

「今度、一度会いませんか?」

小躍りするほど嬉しいメッセージである。

彼はすぐに会ってもいいと返信し、彼女からのメッセージを待った。

彼女の名前は、加藤美里。

二十七歳と書いてある。

大地の登録するマッチングアプリは、基本的に本名で入会する必要があるから、偽名の可能性は低いであろう。

同時に、彼が美里に会ってみたいと思った大きな理由がある。

理由――。

それは、昔通っていたソープランドの泡姫によく似ていたためであった。

そう。

泡姫エレナにそっくりなのである。

だからこそ、彼は美里と会う気になったのであった。

 

週末――。

大地は美里と待ち合わせをする。

新宿まで行き、東口で会いましょうという話になった。

待ち合わせ時間は、午後六時。

つまり、夕暮れである。

大地は、思いっきりオシャレをして出かけた。

この日のためにファッションビルを回り、マネキンが着ていたコーディネートをそのまま真似したのである。

全身ブランド品で固めるという荒業も取れたが、あまり華美に着飾っていくと、よくないと感じたため、控えめなコーディネートを選んだ。

待ち合わせ時間の十分前に、新宿の東口に到着する。

東口は、有名な歌舞伎町が近いため、夕暮れになると、特に混雑している。

特に、今回は週末であるため、混雑はひとしおであった。

待ち合わせ時間になると、大地の下に、美里がやってきた。

美里もオシャレな装いである。

ベージュのトレンチコートに、下はスッキリとしたシルエットの黒スラックスである。

仕事のできるキャリアウーマンという装いだ。

(やっぱり似てるんだよなぁ)

愛しのエレナを思い出し、大地は感慨深くなった。

「待ちましたか?」

と、美里が尋ねてくる。

本当は少し待ったが、そんなことは気にならない。

だから、

「いや、俺も来たばかりだよ」

「よかったです。じゃあ行きますか」

と、告げ、美里は歩きだす。

それに合わせて大地も歩みを進めるのであった。

 

二人がまず向かったのは、クラシカルな雰囲気のあるカフェである。

このカフェは、地下にあり、昭和レトロな雰囲気が漂っている。

大地は、久しぶりに女性とこんな場所に来たということもあり、ガチガチに緊張していた。

すごくのどが渇く。

すると、その緊張を見抜いたのか、美里が告げた。

「そんなに緊張しなくてもいいですよ」

「すみません。若い子とこんなところに来るのに慣れていなくて」

「私、もう二十七歳ですよ。そんなに若くありません」

しかし、四十歳の大地に比べれば二十七歳は、遥か年下である。

一回り以上、年代が違うのだから。

「変わっていませんね」

と、おもむろに美里が告げた。

変わっていない?

一体どういうことだろう。

不審に思った大地は、眉根を顰めながら訪ねた。

「あの、俺たちどこかで会いました?」

すると、美里はにこやかな笑みを浮かべ、

「はい、会っています。覚えていないですか?」

どこかで会っている。

となると、考えられるのは、例のソープランドである。

そう。

美里は実はエレナであるという推理だ。

「あの、間違っていたら、すみません。あなたはその、エレナさんですか?」

と、大地は尋ねた。

すると、美里は、コクリと頷きながら、

「そうです。エレナです。覚えていてくれたんですね。ダー様」

ダー様というのは、大地の愛称である。

ソープランドに通っていた時、エレナにそう命名されて、それからそんな風に呼ばれるようになったのだ。

大地の『ダ』を取って、ダー様。

単純な理由である。

その名前を聞き、大地は懐かしくて涙が出そうになった。

あの愛しのエレナが目の前にいる。

それだけで嬉しさがこみあげてくるのだ。

「ダー様って言われるの懐かしいなぁ。今何してるの?」

マッチングアプリの情報では、小さな会社を経営しているとのことであった。

「アクセサリーの会社を経営しています。実は、ずっと自分で起業したかったんです。それで、一時期ソープで働いてお金を貯めていたんです」

「そうだったんだ」

「はい。それでマッチングアプリに登録したら、昔のお客さんに似ている人が登録していたから、もしかしたらと思って、会ってみたんです。そしたらやっぱりダー様でした」

そう言い、にっこりと笑みを浮かべる美里……。

頬にえくぼができて、とても愛らしかった……。

〈続く〉



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